鎌田大地の2アシストは、期待値0.04のシュートが2本入って生まれた

クリスタル・パレスの金色のアウェイユニフォームで相手選手に対応する鎌田大地
2025年8月、フレドリクスタッド戦の鎌田大地。背番号18。 撮影 MichaelEmilio / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

9月12日、セルハースト・パークの14分。ペナルティエリアの手前で左からの球を受けた鎌田大地は、右から走り込んできたアナン・ハライリへ横に流した。ハライリはワントラップして右足を振り、わずかに当たって向きを変えた球がゴール左隅に入った。

75分には、冨安健洋の縦パスを受けてヨルゲン・ストランド・ラーセンへ通し、ラーセンがイッサ・ディオプを背負ったまま左隅へ流し込んだ。クリスタル・パレスは34分から10人で、試合は2-3で落とした。

ESPNの記録では、この2本のシュートの期待ゴールは、どちらも0.04だった。

「絶好調」と書かれたのは、結果の数字である

試合後の見出しは揃っていた。サッカーダイジェストは「絶好調の鎌田大地が圧巻2アシスト、公式戦3試合連続の得点関与」と打った。日刊スポーツは、プレミアリーグでは自身初の1試合2アシストだと書いている。

並んでいる事実に誤りはない。

日付大会相手鎌田
9月5日プレミア第3節フラム(A、3-2○)89分・1アシスト
9月8日カラバオ杯3回戦ミドルズブラ(H、3-0○)途中出場31分・1ゴール
9月12日プレミア第4節イプスウィッチ(H、2-3●)84分・2アシスト

FotMobの採点は8.1で、今季最高だった。リーグ4試合の平均は7.52になる。本人も試合後に「6番(ボランチ)だったり、10番(シャドー)だったり、2つのポジションをこなしていますけど、いいフィーリングで今はプレーができている」と話している。

結果の数字は、確かに上を向いている。

問題は、その結果が何から出ているかだ。そしてここには、当サイト自身が書いたことも含まれる。8月23日の記事で、筆者は「サージュのパレスは、鎌田が触る球の量をほぼ倍にした」と書いた。触る量が増えるから作る機会も増え、アシストがつく、という筋である。

アシストはついた。だが筋のほうは、4試合で崩れている。

触る量は、アシストが増えるほど減っていった

今季のリーグ4試合を、同じ提供元で並べる。

エバートン(A)マンC(H)フラム(A)イプスウィッチ(H)
鎌田の位置ボランチボランチ右シャドー右シャドー
出場90分90分89分84分
タッチ88503626
期待アシスト(xA)0.150.020.010.05
ビッグチャンス創出1010
アシスト0012
鎌田のタッチはエバートン戦88、マンチェスター・シティ戦50、フラム戦36、イプスウィッチ戦26。期待アシストはそれぞれ0.15、0.02、0.01、0.05。アシストは0、0、1、2。アシストが増えた試合ほどタッチは少ない。
緑がイプスウィッチ戦。タッチは試合を追うごとに減り、アシストは逆に増えた。数値はESPN。図は筆者作成。

タッチは88から26まで、4試合続けて減っている。「触る球が倍になった」と言えたのは、開幕戦の1試合だけだった。

期待アシストは、出したパスの質から推定される「本来なら期待できたアシスト数」である。4試合で最も高かったのは0.15のエバートン戦で、その試合のアシストは0だった。2アシストのイプスウィッチ戦は0.05しかない。

4試合を足すと、期待アシストは0.23、アシストは3になる。

作る量が増えて結果が出たのではない。作る量が減っていく中で、結果だけが出た。

3本のシュートは、合わせても0.22だった

では、3つのアシストの先で何が起きていたのか。ESPNはシュート1本ごとに期待ゴール(xG)を出している。アシストのついた3本を抜き出す。

試合分決めた選手形そのシュートのxG
フラム戦77分ベン・チルウェルボレー0.14
イプスウィッチ戦14分アナン・ハライリエリア手前から右足0.04
イプスウィッチ戦75分ストランド・ラーセン相手を背負って左隅0.04
合計0.22

xG 0.04は、同じ位置と状況から撃ったシュートがおよそ25本に1本しか入らない、という値である。それが1試合で2本とも入った。

合計0.22のシュートから、3点が生まれている。鎌田のアシストを押し上げたのは、パスの出し手ではなく、受け手が確率の低いシュートを決め続けたことだ。

念のため提供元を変えて確かめる。FotMobは鎌田の今季の期待アシストを0.35と出している。ESPNの0.23とは計算の仕方が違うが、どちらを採っても3には遠く届かない。

採点も、同じところで割れている

FotMobの8.1に対して、パレスのファンサイト The Eagles Beak の採点表は鎌田に6.7をつけていた。チーム最高は7.5のクインテン・ティンバーで、ハライリの7.1、クリス・リチャーズの6.8が鎌田より上に並ぶ。

ティンバーのこの試合は、タッチ71、デュエル勝利13である。鎌田の26と3とは、量がまるで違う。

アシストという結果を重く見る採点は鎌田を8.1にし、試合への関与の量を見る採点は6.7にした。フラム戦でも、FotMobの7.7に対して6をつけた媒体があった。2試合続けて、同じ理由で割れている。

10人だったことは、割り引いて読む

この試合のパレスは、34分にアクセル・ディサシが一発退場になり、残り56分を10人で戦っている。支配率は46%、チームの期待ゴールは0.62対1.67だった。26タッチの一部は、この状況の産物である。

サージュ監督は退場後に「3-5-1に組み直した」と話しており、イプスウィッチの地元紙EADTは「3-4-1-1」と書いている。退場後の鎌田が中盤の3枚にいたのか、1トップの下にいたのかは、公開データでは確定できない。

ただし、タッチの減少はこの試合から始まったものではない。88、50、36は、すべて11人で戦った試合の数字である。10人になったことは26という値を説明できても、4試合の流れを説明しない。

筆者の見立て

「絶好調」は、結果については正しい。中身については、まだ言えない。

4試合で3アシスト、公式戦3試合連続の得点関与、FotMob平均7.52。結果の数字として、これを否定する理由はない。

だが「サージュの下で作る量が増えた」は、成立していない。触る量は減り続け、期待アシストは4試合で0.23にとどまる。アシストのついた3本のシュートは合わせて0.22で、それが全部入った。

ここに昨季を並べると、奇妙な鏡像が見えてくる。当サイトが8月23日に書いたとおり、昨季の鎌田は期待アシスト3.24を積んで、アシストは0だった。提供元が違うため数字をそのまま並べることはしないが、向きははっきりしている。

昨季は、作ったのに決まらなかった。今季は、作っていないのに決まっている。

どちらの年も、アシストの数は鎌田の働きの量を映していない。昨季の0アシストを「通用していない証拠」と読むのが誤りだったのと同じ理由で、今季の3アシストを「作る量が増えた証拠」と読むのも誤りである。

そして、8月23日に筆者が立てた「触る量が倍になる」という読みは、4試合を経て、開幕戦1試合の読みだったと言わざるを得ない。

何を見れば答えが出るか

① 1試合の期待アシストが0.3を超える試合が出てくるか

今季の最高はエバートン戦の0.15である。0.3を超える試合が出てくれば、作る量そのものが上がり始めたと言える。出てこないまま結果だけが続くなら、アシストは受け手の出来に依存したままだ。

② アシストと期待アシストの差が、この先縮むか

今の差は3対0.23である。0.04のシュートが入り続けることは考えにくい。次の4試合でアシストが止まり、期待アシストが同じ水準にとどまるなら、この3つは確率の揺れだったことになる。

③ 11人で戦う試合で、タッチが50を超えるか

イプスウィッチ戦の26は10人の影響を受けている。11人の試合で50に戻れば、減少はフラム戦とこの試合の展開の産物だった。30台のままなら、シャドーの鎌田は触らない位置で仕上げに回る選手になっている。

このどれかが動いたとき、それが次の記事になる。

データについて