三笘薫が失ったのは、決定力ではない

ブライトンの黄色いアウェイユニフォームでピッチに立つ三笘薫
2026年1月、フラム戦の三笘薫。この日はフル出場した。 撮影 Timmy96 / CC0(Wikimedia Commons)

10ゴールから、3ゴールへ。

三笘薫の得点は、2024-25シーズンから2025-26シーズンにかけて7点減った。「決定力が落ちた」と言われている。

だが数字を開くと、外した回数は変わっていなかった。

まず、落ちたのは事実だ

プレミアリーグでの記録である。

シーズン出場出場時間ゴールxG
2022-23332,315分78.10
2023-24191,488分33.35
2024-25362,608分109.16
2025-26251,721分34.06

90分あたりに直すと、0.345点から0.157点。半分以下である。擁護のしようがない下落だ。

だが「決めそこねた」のではない

ここから中身を割る。

90分あたり2024-252025-26
ゴール0.3450.157
期待ゴール(xG)0.3160.212
ビッグチャンスを外した回数0.4140.418

決定機を外した回数は、ほとんど同じだ。

そしてxGも0.316から0.212へ、33%落ちている。 xGはシュートを打った位置と状況から算出される。つまり彼は、決めそこねたのではなく、決められる場面そのものが減っていた。

「決定力」で説明できるのは、この下落のごく一部でしかない。

変わったのは、撃った場所だった

シュートを、ペナルティエリアの内と外で分ける。

三笘薫の90分あたりシュート数の比較。ペナルティエリア内は2024-25の1.69本から2025-26は1.26本に減り、エリア外は0.28本から0.42本に増えた。
棒の長さは90分あたりのシュート数。中が減って、外が増えている。図は筆者作成。

エリア内が1.69本から1.26本へ、26%減った。 その一方で、エリア外は0.28本から0.42本へ、5割増えている。

全シュートに占めるエリア内の比率は、86.0%から75.0%に下がった。

得点の出どころも同じ話をしている。2024-25の10点のうち9点がエリア内から。2025-26は3点のうち2点である。

彼は、遠くから撃つ選手になっていた。

仕掛ける回数も減っていた

もう一つ、はっきり動いた数字がある。ドリブルだ。

90分あたり2024-252025-26
ドリブル試行4.35回3.30回
ドリブル成功率41.3%44.4%

試行が24%減っている。 だが成功率はむしろ上がっている。

止められるようになったのではない。仕掛けなくなったのだ。 そして彼の場合、仕掛けることと中に入ることは、同じ動作の表と裏である。

そのかわり、増えたものがある

90分あたり2024-252025-26
キーパス1.28本1.62本

27%増えている。

中で撃つ回数が減り、外から出すパスが増えた。昨季の三笘は、ゴールを取る選手から、ゴールを作る選手のほうへ寄っていた。 それ自体は悪いことではない。だが得点は減る。

なぜそうなったか

答えは、シーズンの形にある。

三笘薫の2025-26シーズン38試合の出場時間を並べた棒グラフ。開幕から6試合連続で先発したあと10月から12月にかけて9試合連続で欠場し、復帰後は短い交代出場が続く。1月から3月に再び先発が並ぶ。
縦は各試合の出場時間(最大90分)。緑はゴールした試合。シーズンが、二度切れている。図は筆者作成。

開幕から6試合は連続先発だった。そこから10月上旬〜12月上旬、9試合を続けて欠場している。

ファビアン・ヒュルツェラー監督の説明はこうだった。

「三笘はまだ打撲からの回復が必要だ。できるだけ早く戻したいと思っているし、復帰は近かったが、慎重にいく必要がある」(2025年10月18日)

11月に入っても復帰は「五分五分」とされた。戻ったのは12月中旬で、最初の3試合は26分・26分・32分の交代出場である。

1月から3月にかけては先発が並ぶ。この安定した時期に、3点のうち1点が生まれている。 そして3月中旬から再び細切れになり、5月9日のウォルバーハンプトン戦、58分で左ハムストリングを痛めて終わった。

中に入り続けるには、連続した出場が要る。 26分の交代出場でエリア内に1.69本ぶんの動きは作れない。

そして今季、まだ1分も出ていない

ブライトンは5月25日、手術を発表した。

「手術が成功し、三笘がリハビリプログラムの初期段階に入ったことは朗報だ。(中略)現在はクラブのメディカルチームと協力しながらリハビリに専念し、来シーズンの復帰を目指している」(ヒュルツェラー監督)

クラブが示した目標は「来シーズン」であって、具体的な日付ではない。

その後の経緯はこうだ。

時期出来事
6〜7月W杯を欠場。森保監督「大会中の復帰は難しいと医療スタッフが判断した」
8月2日日本でのリハビリを経てチーム合流。まだリハビリ中
8月15日ボローニャとの親善試合、欠場
8月16日ヒュルツェラー監督「復帰からそれほど遠くないかもしれない」
8月20日カンファレンスリーグ・プレーオフ、メンバー外
8月23日プレミア開幕戦。欠場濃厚と報道

クラブは一度も、復帰の時期を口にしていない。

「10月復帰」はどこから来た数字か

ここは丁寧に確かめておきたい。日本語圏で見かける「9月末から10月に復帰」という見通しの出所である。

たどると、地元紙 Sussex Express の5月26日の記事に行き着く。 そこにはこう書かれている。

ハムストリングの手術からの回復は4〜6か月かかることが多いが、手術の程度とリハビリの過程に大きく左右される。仮に回復が4か月程度なら、三笘は9月末から10月にかけて復帰できるかもしれない。

つまり「10月」は、一般的な回復期間の幅のうち、最も早い側を取った場合の話である。 クラブの発表でも、医師の診断でもない。そして記事自身が「4〜6か月」と幅を明示している。

この幅を、そのまま計算に入れるべきだ。

では、二桁は届くのか

手術の発表は5月25日。そこから4か月なら9月下旬、5か月なら10月下旬、6か月なら11月下旬になる。ブライトンの実際の日程で、残り試合数はこうなる。

復帰時期別の予想得点。9月下旬復帰なら残り33試合でキャリア最高ペースなら11.4点、昨季ペースなら5.2点。10月下旬復帰なら残り29試合で10.0点と4.6点。11月下旬復帰なら残り26試合で9.0点と4.1点。
いずれも残り全試合にフル出場した場合の上限。緑は2024-25の得点率(0.345/90分)、灰は昨季の得点率(0.157/90分)。図は筆者作成。

最も早い9月下旬の復帰でも、二桁に届くのは「残り33試合すべてに90分出て、キャリア最高の得点率を維持した場合」だけだ。

そしてその2,970分は、彼がプレミアリーグで一度も到達したことのない出場時間である。最も多かった2024-25でも2,608分だった。

5か月かかれば、上限がちょうど10.0点。 1試合でも休めば届かない。6か月なら、キャリア最高のペースを出しても9.0点で足りない。

筆者の見立てでは、今季の二桁はない。

ただしそれは能力の話ではない。 彼に足りないのは決定力ではなく、中に入り続けるための連続した出場時間であり、今季はその原資が最初から削られている。

何を見れば答えが出るか

① 今夜のアストン・ヴィラ戦、メンバーに入るか

入れば、報道より回復が早い。入らなければ、復帰は9月以降になる。

② 復帰後、エリア内のシュートが1.69本に戻るか

本稿の核心はここだ。 戻るなら、昨季の下落は出場が切れていたことの結果だったことになる。1.26本のままなら、役割そのものが変わったということだ。

③ ドリブル試行が4回台に戻るか

3.30回のままなら、仕掛ける役割から離れたと見るべきである。

④ 契約がどうなるか

現行契約は2027年6月まで。 延長交渉に「大きな進展の兆候は見られない」と報じられている。復帰時期と契約は、来夏に向けて同じ問題になる。

このどれかが外れたとき、それが次の記事になる。


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