守田英正のハーフタイム交代は、出来の証拠ではない。後任は同じ45分を66.7%で回した

コヴェントリー戦のパス比較。前半45分の守田英正は16本で成功率81.3%。後半に同じ位置へ入ったグルナ=ドゥアトは15本で66.7%。90分出場した相棒スレイターは30本で73.4%、ハル全体は68%。
同じ45分を引き継いだ後任は、1本少なく、14.6ポイント低い精度で回した。 数値は GiveMeSport の公開値。図は筆者作成

ハーフタイムだった。セルゲイ・ヤキロビッチは2枚まとめて替えた。主将のルイ・コイルと、守田英正である。プレミアリーグ初先発の日は、0-0のまま45分で終わった。

コヴェントリー・ビルディング・ソサエティ・アリーナ。ハルはこのあと82分のリアム・ミラーの一撃で勝ち、昇格組同士の一戦を1-0で取っている。勝った試合で、日本人の先発が前半だけで退いた。

翌朝に並んだのは「出来が悪かったのだろう」という読みだった。前半の守田のパスは16本。 チーム内で目立つ数字ではない。

だが、監督は交代の理由を9日前に言っていた

まず、試合後のヤキロビッチの説明。

At half-time, two changes, because of the dead leg of Coyle and Morita played his last game three months ago. (ハーフタイムに2枚替えた。コイルの打撲と、守田が3か月前を最後に試合をしていないからだ)

これだけなら、負けを取り繕う言い方に見えるかもしれない。 だが同じ監督が、開幕マンチェスター・ユナイテッド戦の前日にこう話している。8月20日、この試合の9日前である。

He played his last game at the end of May (for Sporting Lisbon), I think, so we have to be careful. (最後の試合は5月末のスポルティングだったと思う。だから慎重にいく必要がある)

「慎重にいく」と公言していた通りのことを、9日後にやった。 交代の理由が試合中に生まれたものなら、この発言は先に存在できない。

出場時間の積み方は、45分でちょうど良い

守田は7月にスポルティングからフリーで加入し、2年契約に1年の延長オプションが付いた。そして加入直後にふくらはぎを痛めている。 7月27日の時点で、監督は「あと10日はピッチから離れる」と話していた。

日付試合出場
8月22日マンチェスター・U戦(開幕節)欠場
8月25日ストーク戦(カラバオ杯)31分・PK戦1人目成功
8月29日コヴェントリー戦45分・初先発

3か月ぶりの実戦から、31分、45分。 5日間で76分を積んでいる。次に伸ばすなら60分台という並びであって、45分は落としどころとして不自然ではない。

そしてもう1枚のコイルは10分に警告を受けたうえで打撲を抱えていた。交代枠を切ること自体は、この時点で決まっていた。

後任は、同じ45分をどう回したか

ここが本題である。守田が退いた場所には、ルカ・グルナ=ドゥアトが入った。 同じ試合、同じ中盤、同じ45分。比べる条件としてこれ以上のものはない。

コヴェントリー戦のパス比較。前半45分の守田英正は16本で成功率81.3%。後半に同じ位置へ入ったグルナ=ドゥアトは15本で66.7%。90分出場した相棒スレイターは30本で73.4%、ハル全体は68%。
後任は1本少なく、14.6ポイント低い精度で回した。数値は GiveMeSport の公開値、図は筆者作成。

守田は16本で81.3%。グルナ=ドゥアトは15本で66.7%。

中盤で並んだ相棒のリーガン・スレイターは90分で30本、成功率73.4%。1ハーフに直せば15本なので、本数でも守田が上回っている。

そしてハル全体のパス成功率は68%だった。守田の81.3%は、チームより13ポイント高い。

評価が割れる余地はある。だが「チームの中で低かった」という形にはなっていない。

パスが16本しかないのは、ボールが来ないからである

16本という数字が少なく見えるのは、そのとおりである。ただし、それは守田の問題ではない。

前半のコヴェントリーの支配率は約65%。シュートは8本で、枠内は2本、いずれもタイウォ・アウォニイのものだった。ハルは5-4-1で自陣に構え、ボールを持たない側に回っていた。 試合を通しての支配率は31%、xGは0.73対1.28である。

同じ試合の反対側では、コヴェントリーのマット・グライムズが1人で83本蹴っている。 押し込む側の中盤と、受ける側の中盤を本数で比べても何も出ない。守田の45分を、この試合の中で測るなら分母はハルの267本のほうである。

そして交代したあと、ハルはボールをもっと持てなくなった

ここが、言説にとって一番都合が悪い数字だと筆者は考えている。

逆算すると、後半のハルは27%前後になる。守田が退いたあとのほうが、チームはボールを持てていない。

ヤキロビッチは後半について「We controlled everything(全て支配していた)」と述べている。だがこれは支配率が上がったという意味ではない。 0-0を保ったままカウンター1本で仕留めた、その意味でのコントロールである。つまり後半の改善は、守田を外したことの成果として測れる形をしていない。

ただし断りが要る。 前半の65%と全体の69%は提供元が違うため、後半の27%は概算である。「後半に支配率が伸びなかった」までは言えるが、小数点の精度で扱うべき数字ではない。

現地の採点は5。ただし、後任にも5が付いている

ヨークシャー・ポストは守田に5を付けた。評はこうである。

won the ball high up to create Hull’s first chance but otherwise fairly ineffective, his habit of dropping into the back three to pick up the ball not yielding much (高い位置でボールを奪ってハルの最初のチャンスを作ったが、それ以外はかなり効果が薄かった。3バックに落ちて受ける癖は、あまり実らなかった)

否定的な評価である。隠す必要はない。 そのうえで、2つ引っかかる。

ひとつは、この評自身が認めていること。 ハルが前半に作った数少ない場面の起点は守田だった。支配率35%の45分で、チームの最初のチャンスを作ったのは彼である。

もうひとつは、同じ記者が後任にも5を付けていること。 グルナ=ドゥアトは、監督が「全て支配していた」と評した後半を45分やって、守田と同じ点数だった。採点が前半の出来を咎めているのなら、後半の45分に同じ点が付く説明がつかない。

日本の報道は逆を書いている。ゲキサカは「ハル中盤の守田が安定したプレーでチームを支え」とし、交代理由には触れていない。

「出来が悪くて代えられた」は、現地の記事にも日本語の記事にも書かれていない。ハーフタイム交代という事実だけから出てきた推測である。

それでも、言説の側に残る材料

これを書かないと検証にならない。

採点5は事実で、チーム内で高くはない。 この試合はトゾラキスに8、イーガンに7が付いている。守田は下のほうにいる。

負傷したコイルだけを替えれば、交代枠は足りていた。 守田も一緒に下げたのは、監督の選択である。

そして「45分で切る予定だった」とは、誰も明言していない。 ヤキロビッチが言ったのは「3か月前が最後の試合だった」までで、それは45分で交代する理由になるが、45分が事前の計画だったことの証明ではない。

現時点で言えるのは、出来を理由とする根拠が見当たらないことまでである。そこを越えて「良かった」と書くつもりはない。 16本・81.3%は、受けに回った45分として妥当な数字であって、優れた数字ではない。

何を見れば答えが出るか

① 9月5日のアストン・ヴィラ戦、出場時間が伸びるか

ここで確定する。 31分、45分と積んできた並びの次は60分台である。伸びれば管理だったことになる。また45分で切られるなら、筆者の読みが外れている。

② 先発が続くか

出来を咎められた選手は、次にベンチから始まる。連続で先発なら、それは序列の話になる。

③ 押し込める試合でのパスの本数

支配率31%で16本だった。ヴィラ相手でも条件は変わらないかもしれないが、ハルがボールを持てる試合が来たとき、本数が跳ねるかどうかで「ボールが来ていなかっただけ」なのかが分かる。

このどれかが外れたとき、それが次の記事になる。


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